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  • 山崎 美穂

医学常識はウソだらけ を読むーその1ー

最終更新: 5月11日

まず、著者の三石巌が、長年親しんだ物理学という本業を離れ、こんな研究をするようになったか、その経緯から。

まず、毎年暮れから正月にかけて、恒例行事としてスキーを楽しんでいるという話から始まる。


1901年生まれの著者、95歳時点で20年、その恒例行事を続けている…ということは、75歳からという話だ。


95歳のスキーヤーなんてめったにいるものではない、と著者が書いている通り。


本人は病院にはほとんどお世話になっていないが、実は、重度の糖尿病患者。けれど、何一つ合併症を起こしていないので、すこぶる健康に過ごしている。


1961年、著者還暦の年に話は遡る。


目がかすむので大学病院の眼科にかかったら、「白内障で2、3年もすれば目が見えなくなるだろう。見えなくなったらまた来てください」と言われた。


このことが発端となり、自分で白内障を治そうと決意した。


専門は物理だったが、仮説をたて、検証するという科学的アプローチは、医学にも通じるはずだと、医者とは違う角度から白内障に立ち向かった。


著者の立てた仮説は、「あらゆる生物は、外部から栄養を補給することによって生命を保っている。障害が起きるのは、摂取している栄養に問題があるからに違いない」


この時点では仮説にすぎない。




文献によれば、白内障の原因はビタミンCの不足とあった。


けれど、同じ量のビタミンを摂っていたはずの妻は、白内障にはかからなかった。


それはなぜか?




私が白内障になったのは、私の眼球が他の人より余計にビタミンCを必要としているからではないか?それが不足していたから、眼球がダメージを受けたのだ。だとすると、これから浴びるほどビタミンCを摂取していけば、完璧には治癒しなくても、白内障の進行を食いとめられる。少なくとも、完全な失明は避けられる可能性が高い。

この仮説に従って、著者はビタミン注射を自分で試みた。

その結果、95歳でスキーを楽しめる身体を維持することができた。


これは、本書を通じておいおい説明するが、そもそも医学という分野は科学ではない。科学であるためには「検証の精神」が不可欠であり、「検証」とは仮説を実証する科学的手続きのことである。だが、人間の生命にかかわる分野であるだけに、昔からこの「検証」という手続きが曖昧のままに放置されてきたのである。(中略)私の健康管理学は、栄養を重視しているが、それは生命のメカニズム解明の道を拓いた分子生物学を知ったことが出発点になっている。分子生物学は、遺伝子生物学のことである。(中略)ところが医者の多くは、分子生物学など少しも勉強していない。そもそも、栄養と病気の関係について真剣に取り組んでいる医者がどれだけいるだろうか。

というところで、著者の栄養学の根拠が、1953年、イギリスとアメリカの科学者によって、DNAの構造が解明され分子生物学にあることが書かれている。


1950年代ということは、著者50代での話。著者が還暦の頃にも、まだ新しい学問だったはずなので、英語の文献を読み解き、自分の白内障に応用しようと思いついたのは、大変な着想だと思う。


新しい治療法は、エビデンスを積み重ねた後でないと、臨床に使われないのが医学の常とはいえ、2020年の現在もあまり状況に変化がない。




第一章からは、いよいよ各論的な話になる。


最初にやり玉にあがるのは、食塩と高血圧の関係。




第一章 「医学常識はウソだらけ」


食塩の過剰摂取が原因で高血圧になる人はいる。

ただし、それは100人いれば、そのうちたった1人か2人の割合に過ぎないというのが、著者の主張。


「食塩に含まれるナトリウムは、体内に水分を保持させる働きをしている。その濃度が高くなると体液が増え、その結果、血管を通る血液の量も増えて血圧が高くなるのは事実」


医者は高血圧患者には減塩を指示するけども、そのマニュアルが有効な患者は、全体の1~2%で、残り99%は、逆に健康を損ねてしまう。


なぜそんなことになったのか。そこには「疫学」という学問があり、その疫学というものに限界があるからだ、という。


疫学は、年齢、性別、住所地、などなどもろもろの切り口で、人の生活を統計でとらえ、分析するけれど、それは切り口を間違えてしまえば、間違った結論にたどり着く可能性がある。


食塩の平均摂取量が多い地域で、高血圧患者が多ければ、食塩と高血圧に何らかのかかわりがある…という仮説は成立する。けれどあくまで統計なので、食塩摂取量が多いのに、高血圧でない人がいるし、その逆もいる。


また、食塩ではなく、カリウムと高血圧を結び付けて考えることもできる。


血圧は、食塩に含まれるナトリウムの量だけで決まるわけではない。血圧を決めるのは、ナトリウムとカリウムのバランスで、塩分摂取量は多いのに、リンゴの産地で、リンゴからカリウムをたくさん摂っている地域では高血圧が少なかったという。


高血圧を塩分と結びつける切り口もあれば、高血圧をカリウムの摂取不足と結びつける切り口もある…。


統計は、切り取り方で、どんな解釈だって導き出せる、という話。




ところで、日本人の高血圧の9割は、「本態性高血圧」という。


血管の中でも、動脈は収縮したり、緩んだりする。


収縮すると、内径が狭くなる。


そして、その収縮が変に継続することがある。


収縮が継続すると、これが高血圧の原因となって、このタイプの高血圧を本態性高血圧という。





そして、動脈の収縮(緊張)には、カルシウムが関わり、弛緩には、マグネシウムが関わる。


「え、塩分(ナトリウム)だけじゃなくて、カリウムってのが出てきて、今度はカルシウムにマグネシウム??」


栄養素として昔習った名前が、高血圧の話にこんなにたくさん出てきて驚かれるかもしれない。


ところがまだ出る。


続いてはプロテイン。タンパク質。


動脈の壁が何で出来ているかというと、タンパク質。


動脈硬化という怖い病気があるが、これは、動脈の壁が弾力性を失うことだ。




遺伝的にかならず高血圧になるはずのネズミに、良質タンパク、カルシウム、マグネシウム、カリウムを大量に摂取させたところ、寿命を全うするまで高血圧にならなかったという実験結果もある。(p40)

血圧を下げたかったら、余剰な塩分を身体から排出する条件を整えてあげる方が、塩分を控えるより良い。そのためにカリウム、マグネシウム、カルシウム、そしてプロテインをしっかりと摂取すること。




さらに著者はこう畳みかける。


高血圧に対する医者の対応は、減塩の指示だけではない。血圧の数値が標準を上回れば、患者には血圧降下剤が与えられる。こちらのほうは、はたして適切な治療といえるのだろうか。

「血圧のお薬」は、よく雑誌で特集されているのを見かける。


「医者が、自分は飲まない薬」として。


薬といえば、心配なのは副作用である。仮にその薬に症状を和らげる効果があったとしても、それによって別の病気が惹き起こされたのでは意味がない。

血圧の薬として、良く使われているのが、利尿剤だが、利尿剤では、減っているのは水分だけ。なんの治療にもなってないどころか、「煮詰まった味噌汁」つまり「ねばねば血」になって、血栓を引き起こす。


ほかには、血管を縮める平滑筋の働きをブロックする目的で、交感神経の働きを阻害するブロッカーを降圧剤として使うこともある。それまた問題で、交感神経を押さえつけたら他に弊害が出る。


さらにカルシウム拮抗剤。他の降圧剤に比べれば副作用が少ないと言われているが、この薬にしても血圧に関係ある血管にだけ、選んで作用するわけではない。血圧と無関係な、むしろ働いてもらわないと困る血管の収縮力が弱くなるのではないか。


こういった降圧剤の共通の問題点は、「木を見て森を見ず」の姿勢で、身体を全体としてとらえず、問題だけピックアップして対処しようとするから、かえって問題を複雑化してしまう。


同様のことが、コレステロールにも言える。


脂肪は良くない、コレステロール値が上がるから…と言う人がいるが、本当にそうか?


コレステロールが不足することで、ガンが増えるという説もある。なぜならコレステロールは、細胞膜の材料になるから。


また皮膚にあるコレステロールは、骨を強くする材料になるし、ストレスに耐えるためのホルモンの一部もコレステロールが原材料になる。


実は、コレステロールは、食べ物から取り入れるほかに、肝臓でも作り出している。作らなくてはいけないほど大事なものだ。それが本当に医者の言うような悪者なのだろうか?





塩分とコレステロールについて、本書にはもっと詳しく書かれているのですが、書き写しても煩雑になるだけなので、これ以上は本書をお読みいただくとして、第一章はまだまだ内容盛りだくさんなので、先を急ぎます。





保険医療の点数制の問題点


医者の多くは栄養指導をしない。なぜか?


栄養指導には健康保険の点数がつかず、医者にとってはタダ働きだから。


医者はせっせと、保険点数の高い薬を出すことに専念する。


成人病の薬は、保険点数を稼ぐには、もっとも堅実な方法なのだ。


なにせ、「治る」ということがないので、ずっと薬を出し続けられる。患者はさらに悪化して入院するか、本人が死ぬまで病院に通い続けるし、言うことなしなのだ。


だから、製薬会社も、成人病の薬の開発には、とても熱心だ。難しい病気の研究なんかやめて、成人病薬ばかり作りたがる。


これは、医者が悪いとか、製薬会社のモラルが低いとか言ってる場合じゃなく、現在の医療システムの問題なのだ。


制度をアレンジして、食事指導をすることが医者にとってメリットになるように変えない限り、根本的な変化は期待できない。




これは私見ですが、資本主義の基本は競争とはいえ、製薬会社に市場原理を持ち込みすぎると、生命という価値が脅かされることになる。


過酷な経済競争にさらされれば、企業は倫理より経済優先になるのは当然で、倫理>経済は無理でも、せめて、倫理と経済が同じくらい尊重されるようにするには、企業もそうだが、私たち自身の価値観の中で、倫理を経済と同等の地位に持ち上げなくては、そういう風になっていかないと思う。


まだまだ続く第一章。なので、いったんここで切ります。



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