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  • 山崎 美穂

不眠と疲労

不眠と疲労に関する鍼灸治療について話します。


不眠や疲労がどう困ることかについては、誰もが良く分かっていますが、「なぜ眠れたり、眠れなかったりするのか?」「なぜ疲労がとれるときもあれば、取れないときもあるのか?」については、分かっていますか?


特に、ちょっとしか寝なくても、深く眠れれば、不思議なくらい回復して元気になるということは、皆さん経験上知っていますね。


逆に長く寝たからと言って、疲れがとれるものでもなく、「寝疲れ」なんて言葉もあるくらい、寝ることが逆に疲れの原因になったりします。


また、歳をとると、「寝ることにも体力が必要」とか、「長く寝る体力がない」と言ったりもします。


また、睡眠時間の長さについては、遺伝子によって決まる部分が大きく、短時間睡眠で十分というショートスリーパーには、目指したところで、誰もがなれるわけではないそうです。




まず、疲れたら眠れるかというと、疲れていても、身体が日中の興奮状態が覚めないままで、脳も身体も興奮していると、眠れないということもあります。


これが一番辛いですね。




皆さんご存じのように、生物の身体には「切り替えスイッチ」があります。


交感神経と副交感神経です。


切り替えスイッチの味噌は、必ずどちらかにスイッチが入っている、ということです。望むと望まざるとにかかわらず、どちらかにはスイッチが入っている。


それが、自分で選べないのです。

オートマチックに切り替わるシステム。




皆さん、最近、お腹がグーグー鳴ったことはありますか?


鍼灸治療を数回続けた方は、治療中にお腹が鳴り始めます。


「腹具合が悪いのかな?」


違います。




このお腹がグーグー鳴るのは、意味なくなっているのではなくて、「副交感神経がオンになりました」というサインなのです。


交感神経がオンになっている状態で、お腹が鳴ることはありません。


なぜなら、お腹が鳴るというのは、消化器系が働いているということだからです。




交感神経とか、副交感神経の話って、どっちがどっちか、頭がごっちゃになりやすく、混乱している方も多いと思うので、いったん整理します。


交感神経とは、逃走または闘争を意味します。




戦闘中と、逃走中というのは、どちらも同じモードなのです。


なんとなく、戦闘中の方は、敵に立ち向かって勇ましいし、逃走中というのは、情けないから、「逆」なのではないか?と思うかもしれません。


生物としては逃走も闘争も同じなのです。


戦闘は立派で、逃走は情けないと思うのは、単なる「あるべき論」です。




内臓に悠長に血液を回して、消化吸収にエネルギーを回せるのは、平和な時だけ。


交感神経モード…逃走・闘争状態のときは、モノを食べたり、ゆっくり寝たりしてる場合ではありません。


万一敵の攻撃を受けても、出血が最小限で済むように、「血管が細く」「血流量が少なく」なります。また、内臓の機能は、ギリギリまで停止します。


また、敵を良く観察するために、目の瞳孔が開きます。


手足といった身体の末端に血を送ることが重要になるので、心臓がバクバクし、血圧が上がります。


悠長におしっこしてる場合じゃないので、膀胱の筋肉が緩み、貯尿量が増えます。


肛門もキュッと締まります。


呼吸は早くなります。酸素をとりいれることに必死です。


逃走と闘争の交感神経モードはこんな感じ。





副交感神経モードは真逆です。


無事に敵・危機から逃げ延びた後、いつまでも緊張を続けられはしません。


食べ、寝るという生命維持の基本活動は、副交感神経モードのときにしかできないのです。


周囲に対して緊張していないので、瞳孔は小さくなりますし、心臓もゆったり動き、呼吸も落ち着いています。


内臓にしっかり血液が回ります。


消化吸収は寝ているとき、最も進みます。


内臓に、十分血が供給されます。


おしっこや便も出やすくなります。


便秘より下痢、軟便傾向になります。腸に水分がたくさん供給されています。内臓に血がいきわたるからです。





不眠の状態は、交感神経がオンになっているということです。


交感神経の切り替えがうまく行っていないのです。


自律神経の乱れと言い換えることもできます。




24時間人を興奮させる、刺激的な私たちの日常生活は、副交感神経が機能不全になりやすいのです。


それが不眠と疲労の原因です。




特に辛い、「疲れているのに、興奮して寝れない」状態の原因です。


高齢者は逆。副交感神経ばかりがオンになって、交感神経が働きにくい。そういう方には運動してもらったり、生活の中に緊張感を取り入れてもらうことが必要ですが、


ほとんどの人は、交感神経のスイッチが入りっぱなしで、副交感神経のスイッチが入りにくいために、眠れません。また疲れもとれません。






副交感神経がオンにならないことで、生じるトラブルは不眠だけではありません。


まず、胃腸がダメージを食らいます。



交感神経がオンのとき、私たちは、食べても、食べたものを「消化」「吸収」できていない。



食いしん坊の女の人がいました。


その人はスリムできれいな人なのに、フードファイターみたいに、お弁当を一度に二つも食べていました。


仕事が忙しく、毎日バリバリ働いていました。


でもある日、突然倒れました。


お医者さんの診断は…「栄養失調」


食べたものを、腸でまったく吸収してなかったのです。


それで食べても食べてもお腹が空くので、お弁当を二つも食べていたわけです。




私たちは、うんこを、そんなにマジマジと見つめる習慣がありません。


また、トイレも、すぐ水が張ってあって、すぐ流れるし、見る隙もなかったりします。


もし、うんこをじっくり見ていたら、気付いたかもしれませんね。食べたものが、砕かれただけで、消化されていなかったことに。




不眠の背後には、同時に食べ物の「未消化」があります。


不眠の人は、眠れていないだけではなく、食べ物の消化・吸収も不完全、ということです。


睡眠時間が短い人は、太りやすいという調査結果もあります。




食べたものを栄養にできなかったら、当然、身体は、回復しません。


分かりやすいところでは、筋肉も皮膚もダメージを受けたら、受けっぱなしになります。



私たち生物は、ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、それから初めて「仕事」を含めたやりたいこと、やるべきことが出来ます。


食べて、寝て、他のことはすべてその後。


命あってのモノダネです。




世界が複雑すぎて、見えにくくなりがちですが、


ことの順番は、


逃走・闘争>食べる・寝る>>>やるべきこと・やりたいこと


です。




もしあなたが、不眠や疲労で悩まされているなら、騙されたと思って、鍼灸治療を受けてみてください。


鍼を繰り返すうちに、お腹がグーグー鳴り始めたら、自律神経が整ってきた、というサインです。


睡眠・疲労の問題も、おのずから回復しはじめます。




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