東洋医学の検査法は、脈診や、お腹で診断する腹診、背中で診断する背侯診というのがあります。
もっと細かく色々あるのでしょうが、当院では、どれも、やりません!
理由がいくつかあります。
1.診断が当てにならない
2.検査は病院に任せた方がいい
3.東洋医学を魔法だと思ってる人がいるから
です。
とくに3つめ…困るんです。

1.診断術の難易度が高い
これは、鍼灸の大先輩の言葉なのですが、
「脈診は難しい。習得するのに一生かかる」
私はこの言葉を聞いて、診断から脈診をはずしました。
脈診は、難しいからこそ、すごい技術だし、価値もありますが、
脈診ができる達人は、日本全体どころか、世界で見ても、そんなに多くはないはずです。100にとか、千人いるかいないかではないでしょうか。
昔、脈診の診断能力を調べるために、腕がいいと言われている鍼灸師を二人連れてきて、一人の患者さんをそれぞれ脈診させてみたところ、鍼灸師の見立てがまるで違ったという話があります。
選んだツボもまったく違うツボ。
それでは「鍼灸はおまじない」扱いされても仕方ありません。
このエピソードが、作り話であることを、私は強く願います。
脈診ができるという先生がおられたら、私も一度診てほしいと思いますが、私は脈診を使わない診察技術を磨く方を選びました。
もっと難しい患者さんが来るようになれば、東洋医学的な診察技術も必要とは言われるのですが、その状況になってから考えたいと思います。
現在のところ、腹診、背侯診もろくに使っていませんが、コリを刺す治療しかしていないので、経絡は参考になりますが、診察に東洋医学を使ってはいないのです。
2.検査は病院に任せた方がいい
東洋医学の検査法は、再現性という点で大きく現代医学におとります。
目で見られる検査法。
だれがやっても同じ結果が出る検査法は、信頼できます。
…とはいえ、「だれがやっても同じ」とは言い切れません。
検査技師の腕、医者の診たての能力で、ぜんぜん。もうぜ~~~ん、ぜん!違います。同じ検査と呼ぶのもおこがましいほど差が出ます
それでも、東洋医学の検査ほどバラツキは大きくないです。
というか、患者さんは、検査というものに夢を見ているかもしれません。
TVドラマ『ラジエーションハウス』や漫画『フラジャイル』をご覧になったことはありますか?
前者は放射線科。後者は病理検査部。
病院の中では裏方で、患者さんに直接接することはあまりない、検査部門を舞台にしたドラマです。
私はたまたま自分が大昔、病院の経理をやっていたとき、担当部署が、薬剤部、病理部、放射線科だったので(あと精神科とかも)、どこの部署も一回くらいは顔を出したことがあり、ちょっとだけ親しみを覚えるのです。
そして思うのですが、
患者という立場でいると、病院の裏方を想像することもないです。
目の前にいる看護師さん、お医者さん、理学療法士、作業療法士、看護助手の人、お掃除の人…とは顔を合わせるけど、
検査数値の後ろに、「人が働いている」イメージが、持ちにくいんですよねぇ…
検査を、機械がやってる(間違いないもの)と、どっかで思ってるみたい。
血液を採取して、なんかの機械にかけたら、びゅーっと自動的に、HbA1cいくら…と数値が出る、、、、まぁそういう自動化できているところが多いですけど、そうじゃない面もあるということが、見えないんですよねぇ…
話は、本題とズレるけど、こういう話は知らない人からすれば、興味あるでしょう。
そもそも検査って、「すべてを検査」してるわけじゃないんですよ。
まず、「この病気とあれとこれと…が怪しい」と医者が診たてを立てて、その「疑い」に基づいて検査するんです。
もうね、これ、刑事もので言うなら、最初から、「犯人はあいつだ!」と決めつけて、証拠集めをしているのと一緒なんです。
そんなんあかんやん!?…と思うかもしれませんが、
でも、リアルは、理想とは違う。
予算と、時間制限の間で、診断が下されているので、疑わしいもの全部検査とかはしてなくて、一番疑いが濃ゆい奴をいくつか調べているに過ぎないのです。(じゃないと、医療費天井知らず)
診断の基準としての信頼性で、現代医学は東洋医学に大きく水をあけていて、それは事実ですし、それに、患者さんも、「画像」「検査数値」で見た方が絶対、納得できます。色々あっても、検査法では、現代医学に軍配が上がるのです。
鍼灸師も、ある程度「これは怪しいな。裏にもっと重篤な病気が隠れているかも」と思ったら、患者さんに病院受診と検査をオススメするとうのが、「ルール」です。これはめっちゃ、しっかり、鍼灸学校で教え込まれます。
とかく、鍼灸師(医者もですが)患者さんを囲い込みたがるものですが、それは、
患者さんファーストじゃない
判断だからです。
私は、患者さんファーストを選びます。
検査は病院で。
わずかでも疑いがあれば「一度病院で検査を」とお勧めします。
なにせ、日本は保険のおかげで医療費が安いですから。
検査で患者さんがお亡くなりになることはまずありませんし、診断に悩むくらいなら、疑念をはらうためにも、病院で検査が一番いいと思います。
お医者さんに患者を紹介するときは、紹介状を書きますが、私が何を疑っているか書いています。当然です。
お医者さんは、私の所見程度で、変な先入観を持ったりしません。むしろ負けん気?が強い方が多いので、いっそう念入りに検査してくださる印象です。私が考えなかった可能性も、当然、想定した上で。
…まぁ、医者が「囲い込みたがる」タイプだったりもするので、たまに困りますけどね。
3.東洋医学を魔法だと思ってる人がいるから
これが一番の理由です。
検査を過大評価している人は、2に書いたようにも、現代医学の患者さんにもいるんです。
でも、東洋医学に来る患者さんには「もっと」多いです。
医療の世界は、人の弱さが出る世界です。
患者さんは弱っていて、正常な判断力を失っていることも多いです。
被害者的な気分に陥って、過剰防衛というか、そういう人もいます。
だから、その弱さを助長するようなことは、医療従事者として、やるべきではない。患者さんをより依存的に、より弱くなる方向に案内しない。
だから、1では、ちょっと強めに、「脈診はしないよ!」と書いたわけです。
もし、私が天才で、脈診なんかできたら大変だと思います。
病気が種の段階で私に見えるとしたなら、患者さんは、必ず、私に依存するんじゃないですか? 「危なくなったら教えてもらえる」と当てにするようになるでしょう? 本当に危なくなるまで、ギリギリまで、無茶しよう、適当にしてようって思う人は、必ずいるので。
不思議なものには、夢があります。
占いなんかそうですよね。
「自分に未知の可能性があるかもしれない…!」とかね。
「こんな俺でもまだ金持ちになれる目があるのかも…!」とか。
心に余裕をもってやってる分にはいいです。
医療の分野はそうじゃない。
前に別の記事でも書きましたが、宗教がかってきたりすることもあるくらい、人が切羽詰まって、より弱くなる分野なので、医療従事者には倫理観が必要なんです。
たまに思います。
患者さんは、検査に対して、「私をわかってくれる」「私を導いてくれる」なんて、そんな夢を見る気持ちがあるのかもしれないと。東洋医学、現代医学関係なく。
遺伝子検査が流行っているところを見ると、本質では、占いも、検査も、大差ないのかもしれない。
まぁ…いずれにせよ、医療従事者は、患者さんに過大すぎる期待を抱かせないようにすることも、仕事のうちです。
患者さんの期待を悪用する人が、少々多すぎる気がします。
私も弱い人間ですから、こうやって書いて自分を戒めているところがあります。
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PROFILE

山崎 美穂 やまさきみほ
鍼灸師(国家資格 はり師+きゅう師)
大阪の女性鍼灸師
子どもの頃、仕事と主婦業で忙しい母親を見て、「忙しくても通い続けられる治療院があったらな」と思ったのが、開院の動機です。
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