五十肩、腱鞘炎

恥ずかしながら、私自身、手の使い過ぎから腱鞘炎を患っています。

そして寄る年波には勝てず、五十肩も。


自身を治療しながら感じることは、病気は元から断たねばならないということです。


これまで、ついつい小手先で、痛いところばかり治療して来ましたが、それでは「余計にこじらせてしまった」というのが結論です。




また、鍼灸師同士集まるとよく話すのが、「なんでか自分で自分を治療したくない」


患者さんに対しては、喜んで治療します!という気持ちが勝手に沸いてくるのに、自分の調子が悪いとき、自分で治療するのが嫌に億劫に感じるのです。


それがなおさら「ちょこちょこ治療」に繋がります。


つまり、痛いところだけ刺して、誤魔化す、ということです。


#ちょこちょこ鍼

#痛いところだけ治療

#誤魔化し治療



利き手の治療なので、逆の手だけで治療するのがなかなか辛いところです。


天国のお箸・地獄のお箸

皆さんは、天国のお箸・地獄のお箸という話を聞いたことがありますか?私はその話を聞いたとき、目からうろこでした。




なんでも、地獄のお箸はとても長いそうです。


長すぎて自分の口にご飯を運べません。


なのに、地獄の鬼は、そのお箸を使うことを強要してくるので、ごはんがぽろぽろ、ぽろぽろこぼれおちて、地獄の罪人たちは、食べ物をまったく口に入れることができないのだそうです。


これが、強欲な人たちへの罰なのです。




一方、天国。


天国に行くと、普通のお箸を使えていると思うところですが、ところが、天国でも、地獄と同じお箸を使っているのだそうです。


ところが、天国では、そのお箸を使って、他の人の口に食べ物を運ぶのだそうです。


「あーん」

「どうぞ~」

と、お互いに給仕しあうので、誰も飢えることはないそうです。


人に親切に生きてきた天国の人たちは、長いお箸の使い方を間違うことはなかったのです。


#天国のお箸・地獄のお箸

#情けは人のためならず


鍼灸師が、自分の治療に乗り気になれないのは、一つには自分の背中側に鍼を刺せないからというのもありますが、「人に喜ばれたい」という気持ちが、人の本能だからかもしれません。


ただし、人に治療して差し上げることが何よりの喜びである、私たち鍼灸師も完璧とは程遠く、「わざわざ人の治療院行くのめんどうくさい」「人の鍼を受けるのが嫌」だとか、そういうエゴと葛藤は付きまといます。


患者さんには、「ちゃんと計画を立てて治療に通うようにしないと」なんてことを言うのは、自分自身も意志が弱いから…あんまり大っぴらには言えませんが。


治療はあらかじめ計画を立てて、〇曜日のこの時間に受診する!と決めて、良くても悪くても、淡々と治療を続ける方がいいです。


「悪くなったら予約しよう」と思うと、一々そのたびに意志力を発揮しなくてはいけないから・・・それが治療が間遠になって、投げ出してしまう原因の一つです。


#治療は計画を立てて

#意志力を節約しよう

#治療を投げ出す原因




パソコンとスマホがいじめる

腕は、とても立体的な形をしています。

背中側は肩甲骨、胸側は鎖骨まで含めて「腕」です。


バネ指や手の腱鞘炎など、手の疾患に苦しむ方が今どんどん増えています。


昔は「キーパンチャー病」なんていって、キーボードを打つ「専門職特有の病気」扱いでしたが、今どき仕事でパソコン作業をしない人が多数を占めていて、腱鞘炎、五十肩、バネ指などの手の疾患は国民病です。


またスマホも、同じく首肩から手を酷使します。スマホ首なんていう病名も出てきました。それについては別稿で書きます。



ところで、なぜパソコンで腕を傷めるのでしょう?


腕を傷めると言うと、酷使して傷めるというイメージがあると思いますが、酷使とは何でしょう?どういうことを酷使というのでしょうか?


#鍼灸師でも自分の背中は刺せません

#キーパンチャー病

#身体を酷使するとはどういうことか




五労を知っておく

実は身体を最も傷めるのは、同じ姿勢の継続です。


最近スマートウォッチに「長座注意」という機能があります。アップルウォッチのテレビコマーシャルでもやってましたね。髪の長い女性がオフィスで働いていて、突然椅子から立ち上がり、おいっちに、おいっちにとラジオ体操みたいな運動をする…という。


あれはバイブレーション機能で、長座注意のアラームが出て、「一時間座っていたので、10分運動しなさい」と指示されたからなのです。


座り過ぎは身体にとても悪いのです。


東洋医学でも同じことを言います。


久行(きゅうこう)・久視(きゅうし)・久坐(きゅうざ)・久臥(きゅうが)・久立(きゅうりつ)


と言います。


歩きすぎ、本の読みすぎ、座りすぎ、寝すぎ、立ちっぱなし


「五労」と言い、東洋医学では、これらを避けなさいと言っています。


東洋思想では、極端は避け、中庸を尊ぶのです。


パソコン(スマホも)を使うとき、手をキーボードから微妙に浮かして、不自然な姿勢になります。また椅子の高さや硬さと、机の高さが合っていないと、これまた不自然な姿勢になります。


在宅ワークで、キッチンテーブルや、今のソファでパソコンを使っていた人は、何らかの不調で苦しんでいるかもしれません。いずれにしても同じ姿勢で長時間は、良い机・椅子を使っていても多少は無理になります。


スタンディングデスク(立った状態で使う机)と椅子を交互に利用するのもいいですし、居間とダイニングを行ったり来たりするのもいいです。


同じ姿勢、同じ机で仕事をしないことと、あとやっぱりなるべく椅子机には、投資してくださいね。体に合ったものを使うだけで負担激減ですから。


#五労

#久行久視久坐久臥久立

#長座注意



不自然な姿勢のキープが一番身体に悪い

同じ姿勢が身体に悪い…それをもっと具体的に言うと、「癒着が進む」から良くないのです。


ゴムをイメージしてください。ゴム風船。緑とピンクの。

これを太陽光線が良く当たるところに放置したら、どうなりますかね?


数日後発見したら、緑とピンクのゴムが癒着して、剥がせなくなっていませんか?


これが私たちの身体の中で起こるのです。


私たちの身体の素材は、タンパク質です。


筋肉も、筋肉を包む膜も、血管や神経なんかの素材も、だいたいタンパク質。


そのタンパク質の特徴の一つが「熱変性」です。


同じ姿勢を続けている間にも、筋肉は仕事をしています。


筋肉が仕事をすれば、熱が生じます。


それが癒着を生む熱源なのです。


不自然な姿勢のキープが身体に悪いというのは、そういうことです。


#タンパク質の熱変性

#コリって癒着のこと

#癒着の原因は筋肉が仕事をしているから

#不自然な姿勢のキープ




特に手に特有の問題

手は複雑な構造をしています。


一番表面が皮膚。その下に脂肪。異なる働きをする薄い筋肉がいく層も折り重なり、一番深部には骨があります。


それは手も、腕も同じですし、もちろん足も脚もそうなっています。


けれど、手は痛みに過敏ですし、他と違って作用が複雑。なにより、「筋肉が薄い」それがウエハースとかミルフィーユのように折り重なっている…と言うのが問題なのです。


たとえば、左右に収縮する薄いゴム膜があるとして、それにクロスするように、別のゴム膜を持ってきて重ね…と交互、交互に重なっているのが腕です。


筋肉の薄さが問題で、筋肉(ゴム膜)が薄いので、2枚上に重なっているゴム膜から熱で溶けたゴムが2枚下のゴム膜まで巻き込んで癒着する…と言うことが起こるのが腕や手なのです。


#筋肉の薄さが問題なのです

#溶けたゴムが周囲に影響




痛みの働き

その薄いゴム膜のミルフィーユ層の間には、点々とイチゴやブルーベリー…ではなく、血管や神経が通っています。


パイ生地とパイ生地の間の生クリーム層に血管と神経が点在しています。


癒着はその血管と神経も巻き込みます。これが、手や腕の治療の痛みがきつい原因です。


#やっぱり薄さが問題

#ミルフィーユの中の血管や神経


腕の中(手でも一緒)の筋肉の癒着は、こじれればこじれるほど、色んな波及の仕方をします。


中でも深部の骨に近いところにある筋肉。


皆さんに、痛い場所を質問して、「大体この辺が痛いんですが、どこと指でさすことができない。なんとなくこの辺一帯かな…」という言い方をする場合、


それは深部の筋肉に異常が起こっていることを示しています。★★★★



#病変部の深さによって痛みの感じ方が違う


「ココが痛い」と言える場合は浅く、「この辺全体に…」と言う場合は、患部が深い…つまり「こじれている」ということです。


実のところ、根っこが同じ問題であっても、初期は表皮近いところが痛く、こじれてくると、ぼわっと重痛く、そして痛みは深部に達します。


別に表面近いところは治ったわけではないので、そっちはそっちで悪いまま、深部の方が悪化してくるのです。




参考までにこういう場所を刺したときの感覚を、あらかじめお伝えしておきます。


まず切皮(鍼が最初に皮膚を破った瞬間)時点で、「痛ってぇええ!!」となります。


「ちっぽけな鍼で傷ついたとは思えないほど、極端に痛い」です。


鍼はまだ皮膚3ミリとか4ミリ傷つけただけです。


#鍼が極端に痛いとき




深部が痛い(悪い)ときも、皮膚に近い浅い部分の病変が病変の起点であった過去は変わりません。皮膚と皮膚に近い、浅い筋肉との間にも癒着があります。その癒着に刺さったときが、その異様な痛さが生じる場所です。


申し訳ありませんが、そこで鍼を止めても深部の病変には届いていません。


こういったときは、休憩をはさみながら治療をつづける場合もありますし、抜いて少し位置を変えて深部を狙うこともあります。目標は皮膚ではなく深部の筋肉です。


中に刺入していくと、しばらくは無痛で、患部に近づくと鈍痛、重い感じ、響く感じなどが出てきます。重く響く感覚が出るのはOKです。これはヒビキと呼ばれる特別な感覚で、指圧されたときに「ああ、そこそこ!」と痛気持ちいい感覚の増幅版です。


こじれてない場合の、痛みのバリエーションはこれだけです。


#ヒビキ

#痛気持ちいい感覚




問題はこじれている場合です。


こじれている場合は、刺入していくと、筋肉が勝手に収縮する瞬間(得気)が起こることがあります。


#得気

#筋肉が勝手に収縮


これがなぜ起こるかというと、脳から「収縮しろ」という電気信号が“過去”来ていたのですが、コリ(癒着)に妨げられて、収縮が妨げられていました。


しかし癒着が剥がれた瞬間に収縮が起こったのです。


ようは正常化です。


コリ(癒着)をとるとは、血流、神経、筋肉などの「流れの正常化」のことです。


鍼治療をしていると、この流れの正常化を、劇的な形で感じることがあります。


腕でよくあるのが、「患部側の耳が良く聞こえる感じ」「患部側の目が良く見える」です。


別に普段耳が聞こえなかったわけではないのに、「耳のつまりがとれた」ように感じることもあります。


#患部側の耳が良く聞こえる

#耳のつまりがとれた




鍼で神経が傷つく恐れはないのか?

筋肉のミルフィーユの中には神経も血管もあります。


本来鍼を近づけると、神経も血管も、鍼を避けるように動けるものなのですが、癒着によって「固められ」ていると、鍼を避けられません。


鍼がミルフィーユのクリームを通過するとき、神経や血管が傷つくことはあります。


鍼治療をするとき、鍼灸師は患者さんの反応をじっと観察しています。


観察されているなぁと感じたら萎縮したり、遠慮したりする人もいますが、鍼灸師は「できるかぎり神経の損傷は避けたい」と思っています。


神経は血管、筋肉に比べて回復しにくいからです。




まったく無痛の治療は不可能です。麻酔をかけて治療すると鍼が神経に当たっても気づくことができません。


患者さんに痛みの程度を聞きながら、「これは耐えられる痛さ」「たぶん耐えられない痛さ」「ここはちょっと痛いけど我慢した方が良さそうな痛さ」というのを、患者さん自身に判断していただきながら鍼をしていきます。


#鍼で神経が傷つくリスク

#鍼で神経損傷

#本人に確認しながら深度調整




骨に近い最深部の筋肉にありがちなこと

そして、患部が骨のキワに近い最深部にあった場合、その筋肉を鍼で刺すときに異様な抵抗があります。


これは患者さん自身が感じるというより、刺している私が感じます。


「ほとんど骨」


硬さから骨だと誤解させられるほど、筋肉が硬くなっているのです。


ほとんどその筋肉は死にかけているんじゃないかと思います。ちゃんと血が流れ、神経が通じているとは思えないのです。


鍼を押し付けて、しばらくするとそんな筋肉もやっとほぐれ、鍼を受け入れてくれます。


これもまた、患者さん自身はあまり感じないことが多いです。


ときには、「あー…そこです」とか、「そこだと思います」という言葉が聞けることもありますが。




身体の深部で、身体の主にも気づいてもらえず、窒息しかかっている筋肉は、「ラード」のような感触があります。


鍼を刺すときも、抜くときも、「異様にねばる」のです。ネバネバしています。


硬くなったラード、硬くなったバター。冷蔵焼けして硬くなった肉。


当然、ただごとではありません。




このラードが背骨の近くに堆積していると、「神経根圧迫」といって、麻痺やしびれが生じることがあります。


ヘルニアだと誤解されることも多いように感じます。


私は「ラード」と呼んでいますが、掃骨療法の小橋先生は、「歯垢」「歯石」に似ていると言っていました。


硬すぎる歯石は鍼でガシガシと削り取るようにしますし、歯垢のようなドロドロも、ガシガシします。


いずれにしても、硬すぎる部分は柔らかく、削れるものは削り、血流を改善させ、神経を正常化させて治します。


特に血流は重要で、白血球の貪食作用で、鍼が削った破片などを食べてもらわなくてはなりません。




#ラードに似たもの

#歯垢と歯石に似たもの

#麻痺やしびれの原因



最後は血行・本人の治るチカラ

免疫力が大事と言いますが、血行がないところに免疫力は発揮できません。


血の量が少ない人は血を増やさなくてはなりませんし、神経が通じてないところは、神経を正常化させなくてはです。


鍼灸治療はしばしばミラクルを引き起こします。


それは「たまたま鍼が神経や血管を圧迫していた巨石みたいなコリを砕いた」ときなど、まぐれ当たりのホールインワンがあり得るからです。


しかし、本来の鍼灸治療はそういうものではありません。


重傷者は、神経や血管、筋肉そのものが弱っている人が多く、流れをせき止める石、何十個も河原に転がってる巨石を一つ一つハンマーで砕いていくような、気の遠くなるような作業です。


何十個もある巨石の一つが、たまたまハンマーがうまくあたってくれて、綺麗に砕けたからと言って、他のも砕けるとは限りません。


麻酔をかけての外科手術が、ダイナマイトで爆破するような治療だとしたら、鍼灸はせいぜいトンカチです。




そのかわり、鍼灸治療は、治療回数を重ねるごとに、治療そのものに伴う痛みは軽減しますし、心地よさすら感じられるようになります。


何十回やっても、ずーっと痛い歯医者の歯石とりとは、そこが違うところです。


鍼灸治療が、しだいしだいに痛いところが減って、鍼が心地よく感じられるようになり、自分の身体のことが深く理解できるようになってくるのは、身体をケアする人へのご褒美なのかなぁと思います。




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